株式会社大日製作所様Case study

株式会社大日製作所様
  • JSIA会員 制御盤/受配電盤メーカー

「非熟練者も即戦力に」盤製造の効率化を実現

株式会社大日製作所は、1937年の創業以来、北陸を基点に80年以上の長い歴史の中で培った技術で、受配電盤、制御盤、分電盤の製造を柱に設備設計・システム設計まで幅広く手掛け、より良い製品をご提供できるよう、日々努力を続けています。設計から製造までの一貫体制により、お客様のご要望に沿った製品を短納期・高品質でお届けできることが強みです。

 

配線熟練者の減少に危機感

当社ではAutoCADを使用していますが、2017年に電気設計CAD「ECAD DCX」、2021年に盤製造支援システム「WIRE CAM DX」を導入しました。ECAD DCXは流用設計の多い物件で使用しています。流用設計においては修正漏れなどの設計ミスが発生しやすいのですが、ECAD DCXはデータベースで一元管理されているので、不整合チェック機能や変更時の関連箇所への自動反映により、設計ミスの削減に大いに役立っています。

WIRE CAM DX導入検討の背景にあったのは、配線作業者の高齢化に対する強い危機感でした。当社の主力製品は制御盤や高圧・低圧のキュービクルですが、この先熟練者が少なくなっていく中で、新しい人が入ってきても、一定品質の製品を作り続けるために、どこかで何か手を打たなければとの共通認識が社内にありました。また、同時に標準化も図りたいとの考えもありました。同じ図面を用いても、熟練者の配線と若手のそれとは全く仕上がりが違ったからです。誰でも同じ品質で製品を製造できる体制を作るため、ECAD DCXだけではなくAutoCADの図面でも配線測長が可能で、製造とデータ連携ができるWIRE CAM DXを採用しました。

技術部次長 兼 機械システム課長
三上 敬吾 様

ミッションは「生産能力を維持しながらの移行」

WIRE CAM DX導入後は製品全体の品質レベルも向上しています。また、導入後約1年半が経過しますが、設計から製造までの全体としての工数をおおよそ15%削減できています。配線設計の工数 がプラスされたにも関わらず、作業全体を圧縮できたのです。

とは言え、ここまでの道のりは平坦ではありませんでした。例えば、板金・塗装・部品手配の間 に配線設計が終わらないといけないのですが、最初は遅れたり、最終検査でミスが見つかることも ありました。設計側にそれら全てをフィードバックし、一つずつ徹底的にミスを潰していきました。 今では設計者が配線など全体の工程を考えた設計ができるようになるなど、技術力と意識の向上という嬉しい副産物も生じています。他にも苦労したのは、生産能力を維持しながらシステムを移行できる仕組みづくりです。当社では約20年前に社内一斉にCADを一人一台体制にシフトしましたが、全員が同時期にCADを使いこなさなければならず、会社全体として苦労したのを覚えています。

設計を手がける技術者にとっても
使いやすいシステム

今回はこの経験を活かし、まずは一部の盤製品でWIRE CAM DXを利用しての生産を開始しました。その際に、通常の盤設計を行うスタッフとWIRE CAM DXで配線設計をするスタッフを別チームに分けました。配線設計のスタッフは、もともと図面が読める技術者ではありませんでしたので、配線ルートやノウハウをデータ化して標準化したルールで配線設計ができるように変更しました。

次に、製造現場で誰もが配線作業をできるよう、配線ルートが表示される配線支援モニターを取り入れました。また同時にWIRE CAM DXを使うスタッフを定期的に変えながら、使用できる人員を増やしていきました。そして約6ヶ月のテスト運用期間を経て、キュービクル、分電盤、制御盤の全製品でWIRE CAM DXを利用した生産体制へ移行しました。

WIRE CAM DXの運用開始前は、一人で図面を見て配線作業ができるまで3年程かかっていましたが、運用開始後は約6ヶ月間の教育で可能となり、非常に大きな効果を感じています。また電線加工機へのデータ連携により、手作業を機械化することで作業工数の削減や品質の向上につながっています。

変える瞬間は大変でも、やって良かったと思える

多くのスタッフが頭では新しい取り組みの必要性を理解しつつも、通常業務に追われてしまいがちです。これは当社だけでなく、多くの現場で共通する悩みではないでしょうか。最初は反対の意見や不満が出ることもありますが、将来を見据えて「変えるときは大変だが、後でやって良かったと思える」との確信をもって取り組むことで、乗り越えることができると思います。

当初は「WIRE CAM DXでは配線できない」と話すスタッフもいました。しかし今は逆に昔の図面では配線ができないとの声が多くあります。WIRE CAM DXは、それだけ当社にとって欠かせない存在になっています。

生産能力を維持しながらの
システム移行を達成

「効率化に正解はない」さらなる生産性向上を

立ち上げ期間に生じた疑問や困りごとは都度、ECADソリューションズに相談してきました。アドバイスだけでなく、改善などの要望を製品のアップデート時に反映してくださったりと、使う側の声を聞いてくれる頼りになる存在です。

現在、盤設計・製造工程の一新はひと段落つきました。目標としていた工数も達成し、今はさらなる効率化を考えられるようにもなっています。何よりも、これからの若手が配線作業で困らない仕組みの基礎ができました。10年、20年後を見据えると、効率の良い配線方法など、熟練者の頭の中を見える化し継承することが欠かせません。WIRE CAM DXを使えば、今まで残せなかった配線長や配線ルートなど「どう配線したか」も可視化して保存できます。今後は経験値とノウハウを蓄積し、将来に向けた安定的な盤製造に活用していく構えです。

当社は常に新しい手法を取り入れてきました。私自身も同じ方法を続けるだけでは駄目だとの思いがあります。効率化には正解はないので、これからも新しいことに挑戦しながら工夫をして、生産性の向上を追求していきます。今後もECADソリューションズの製品開発や新しいサービスに期待しています。

※会社名、製品名などの固有名詞は各所有者の商標あるいは登録商標です。