株式会社明都パネルは1980年の創業以来、制御盤や分電盤・キュービクルといった盤の組み立てを行う「盤製造の専門メーカー」です。社員一人一人が組み立てのプロフェッショナルであり、お客様の様々な要望に対応しながら、必ず納期通りに完成させ、納品することを徹底してきました。いかに早く正確に組み上げられるか、またお客様が求める電気配線の見た目のうつくしさや安全性の実現を常に探求しています。そのため、若手や新しく入った人も早く作業を覚え、慣れることができるように作業工程の分業化や単純作業化、DXの推進にも積極的に取り組んでいます。
コロナ禍と部品の調達難を機に変革に着手
当社は盤の製造が専門で、社内で設計はしておらず、お客様から紙やPDFデータで図面をいただき、そこから組み立て・配線をしています。2020年のコロナ禍に、図面が手元にあるのに部品が入って来ず、作業が進まない状況が発生していました。それまでのように全ての部品が揃うのを待って作り始めたのでは納期が厳しくなることから、部品の入荷待ちの間に進められることはないかと考え、プロジェクターで中板の上に部品を投影し模擬配線をして、電線の事前準備をしてみることにしました。それほど正確ではありませんでしたが、電線の長さを測り、電線に番号を振って圧着端子を付け、まとめられる電線は束ねてハーネス化しておくことで、部品が届いた時には電線加工をする必要がなく、すぐに配線ができるようにしました。
これをきっかけに、従来のやり方にこだわらず様々な工夫をし、盤の組み立てのデジタル化にも力を入れて取り組むことになりました。
その後、WIRE CAM DXというものがあることを知り、モニターに作業指示を映し出し、それを見ながら作業をすれば、経験が浅い社員でも配線作業が行えるのではないか、ベテラン社員から若い人へのスキルの伝達もスムーズにいくのではないかと考え、誰でも配線作業ができる状態を目指して導入することにしました。

富窪 淳一様
電気CAD未経験からWIRE CAM DX立ち上げに成功
2024年7月に導入し、10月には立ち上げることができました。弊社は製造専門のため設計業務はやっておらず、これまで電気CADは持っていませんでした。そんな会社がWIRE CAM DXを導入して使えるのか不安でした。しかし、いざ使ってみると、配線作業をずっとやってきたためか、違和感なく、割とうまく使えたと思います。どこからどこに配線するか、どこで2本がみするかなどを考える必要がありますが、実際に配線をする感覚で配線設計をしています。また、部品情報を入力する際も、ECADライブラリに制御盤に必要な部品はほとんど揃っていて、そこから利用できるので、困ることはなかったです。設計変更への対応も、差分読込機能を使うことで容易に対応することができるので便利です。
立ち上げの際にはWIRE CAM DXの操作ガイドが非常に使いやすく、サポートセンターのフリーコールもあるので、分からないことはできるまで説明してもらいました。聞いた数日後には「あの後できましたか?」と確認の電話までもらい、サポートの手厚さに驚きました。
作業工程を区切り分業化
お客様から図面をいただいた後、WIRE CAM DXで配線設計をすると、配線ルートが決まり、作業に必要な情報が出揃います。必要な部品や電線も予め準備できるので、あとは機器を取り付けて配線をするだけです。WIRE CAM DXの指示通りやれば誰でも配線作業ができるので、配線作業は比較的経験の浅い社員にまかせています。その後の電線と部品への繋ぎ込みは部品の端子の位置を把握していて、作業にも慣れた社員が担当するという形で作業工程を区切って分業化しています。
製造に必要なデータと帳票づくりの手間と負担を大きく低減
今までは仮配線してから電線を一本一本バラして測長したり、線番データを手で打ち込んでいたため、時間も労力もかかっていました。WIRE CAM DXでは、配線設計の結果から、電線の長さや圧着端子の種類、線番の方向、電線の種類などが簡単にExcelデータに落とし込めるため、製造に必要なデータ作成の工数が大幅に削減できました。線番データも、WIRE CAM DXで登録したデータを、そのままマークチューブプリンターに取り込んで印字加工ができるため一石二鳥です。
最近は量産の盤が増えてきているので、電線加工とハーネス化の作業を外部パートナーにお願いしており、発注する際のデータもWIRE CAM DXから出力して作成できるのでとても便利です。納品されたハーネス部材は専用の棚に番号順に並べ配線作業がしやすいよう工夫しています。また、以前は扉に出す電線などは長めに余長をとって、配線時に余った部分を切っていましたが、WIRE CAM DXだとピッタリのサイズが出せるので、電線の無駄が少なくなり、材料廃棄は30〜40%くらいは減らすことができたと思います。ダクトについても、必要なダクト数の切断加工に1日かかることもあったので、WIRE CAM DXで作成したデータをもとにダクトメーカーに発注し、ダクトを必要な長さに切断して納品してもらうことで、効率化できています。
量産時の作業効率化の取り組み
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WIRE CAM DXで
製造データを出力 -
調達データとして活用
工程短縮 -
モニター機能で初心者でも
配線指示に沿って作業可能
モニター機能で初心者でも配線作業が可能に
WIRE CAM DXのモニターを見れば配線ルートが視覚的に分かるので、制御盤を製作する上で一番難しく、経験がいる「図面を読み解いて配線する作業」からハードルを下げることができています。初心者でも、モニターの指示通りに作業をすればよいので、担当できる人を増やすことができました。自力で配線していた時は80時間かかかっていた作業が、WIRE CAM DXの活用により、経験の少ない作業者でも60時間で作業ができるようになりました。
また、作業者によって最適だと思う配線ルートは異なり、同じ図面の盤でも完成後は異なる見た目になっているということはよくあります。たとえお客様の仕様を満たしていても、量産やリピートの場合、1面ずつ見た目や配線ルートが異なることはマイナス材料になってしまいます。WIRE CAM DXのデータをベースにすることで、会社として配線ルートを統一でき、品質の向上にもつながります。
WIRE CAM DXで制御盤づくりを楽しみ、スキルアップにつなげる
この先、確実に労働人口が減っていく中で、技術者を集めることは難しくなっていきます。また、入社したばかりの経験が浅い人に対して図面の見方やどのように配線していくのかを教えるのはとても難しく、課題となっていたのですが、WIRE CAM DXであれば、どこにどんな順番で配線をすれば良いかが分かり、新しい人も作業を理解しやすいと思います。実際、当社でもWIRE CAM DX導入によって「誰でも配線作業ができる状態にする」という目標は達成できました。
現在、ベテランの社員には特殊で難易度の高い盤づくりを担当してもらいながら、新しく入ってくる人に向けたマニュアルやデータづくりなどにも取り組んでもらっています。盤業界は高齢化が進み、新しい人が入って来ない、入っても続かないという現状がありますが、WIRE CAM DXによって、若い人たちに制御盤を組み立てる楽しみを味わってもらい、その過程で専門的な知識を身につけて作業も上達していけるようにし、人材の確保と技術の継承につなげていきたいと思っています。

